先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業 Science and Technology Platform Program for Advanced Biological Medicine

採択課題

次世代血液脳関門通過性ヘテロ核酸の開発による脳神経細胞種特異的分子標的治療とブレインイメージング

<研究開発代表者> 横田 隆徳

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 教授

横田隆徳

 核酸医薬品は標的遺伝子への特異性が高いことから次世代バイオ医薬品として期待されています。2016年の脊髄性筋萎縮症のヌシネルセンを初めとして、筋ジストロフィー・家族性アミロイドポリニューロパチー等の神経・筋疾患に対して上市されており、また多くの神経疾患で臨床試験が進行中です。一方で神経疾患に対しては髄腔内投与に限定されています。難病を克服するための今後の課題として、1)血液脳関門(BBB)通過による全身投与を可能にする技術と、2)標的細胞の特異性を持ったデリバリー技術の開発が必要と考えられます。
 我々は、1本鎖DNAであるアンチセンス核酸(ASO)や2本鎖RNAであるsiRNAは基本分子構造が異なり、独自の細胞内の作用機構を有する第3の核酸医薬であるDNA/RNA2本鎖ヘテロ核酸(HDO)を創生しました。2本鎖ヘテロ核酸は標的mRNAに結合するアンチセンス核酸の主鎖と、主鎖に相補的なRNA鎖からなる非天然機能核酸です。この主鎖は両端が修飾核酸であるLNA、中央部がDNAで、2本鎖の中央部がDNA-RNAヘテロ核酸になるため、この部分が細胞内のエンドヌクレアーゼであるRNase Hによって相補鎖RNAが切断されます。その結果、単独となった主鎖が標的mRNAに結合して再びRNase Hが標的mRNAを切断して遺伝子抑制効果を発揮するデザインです。すなわち、RNase Hが相補鎖RNAと標的mRNAの切断の一人二役を果たすことにより、主鎖の結合親和性に影響を与えることなく相補鎖RNAに誘導分子を結合することが可能となった点が特徴の分子技術です(図1)。
 これまで、核酸医薬の開発の最大の問題点は静脈投与などの全身投与で肝臓以外の臓器への送達が出来ない点にありました。しかし、2本鎖ヘテロ核酸の特徴である内在型の薬剤送達システムの導入分子として、我々の特許であるビタミンE (VE)をリガンド分子として結合させることにより、静脈投与で肝臓以外の腎臓など多くの腹部臓器の標的遺伝子の制御が可能になりました。一方で、中枢神経の効果は限定的でありました。
 そこで、我々は更にHDOの技術発展を行い、全身投与したHDOがBBBを通過して脳内の内因性遺伝子を制御する画期的な技術を開発しました。このBBB通過性HDOは末梢投与による中枢神経制御を可能としたブレイクスルー技術として日米のリーディングの製薬企業にライセンスされて、複数の製薬企業との共同研究が開始されています。
 その為、本事業ではBBB通過性HDOを更に最適化して、毒性を軽減させた次世代BBB通過性HDOを開発し、本技術の汎用性の向上を図ります。並行して細胞種に特異的な受容体を認識するセカンドリガンドを付加することによって特定の細胞種に特異的な遺伝子制御を目指します。さらに、遺伝子制御に加えて細胞種特異的な脳分子イメージング技術を開発して、画像診断と治療を融合したTheranostics (therapeutics & diagnostics)の技術開発を目指します。

図1 図1: DNA/RNAヘテロ核酸(HDO)の遺伝子抑制メカニズム(A)と有効性(B)
(A)Ligand分子で細胞内へ導入されたヘテロ核酸は、RNaseHによって相補鎖RNA(cRNA)が切断され単独のアンチセンス核酸(ASO)となる。その後、標的mRNAに結合して、遺伝子発現抑制効果を生じる。
(B)その有効性はASOよりはるかに高い。
図2 図2: 次世代血液脳関門通過性ヘテロ核酸の開発による脳神経細胞種特異的分子標的治療とブレインイメージング
図3

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