先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業 Science and Technology Platform Program for Advanced Biological Medicine

採択課題

糖鎖付加人工金属酵素による生体内合成化学治療

<研究開発代表者> 田中 克典

理化学研究所開拓研究本部 田中生体機能合成化学研究室 / 東京工業大学物質理工学院応用化学系

田中 克典

 本研究では、がんを標的とした生体内合成化学治療に関する基盤技術とその治療システムを開発することを目的とします。この治療システムは、下記4点の技術開発により実現されます。まず、(1)標的のがん種、またその様々なステージに選択的な糖鎖付加アルブミンを即座に同定できるライブラリーシステムを開発します。(2)ここで見出す糖鎖アルブミンの構造を均一化する化学的手法を確立するとともに、単一細胞への相互作用の確認と内在化の有無と毒性試験、さらに体内動態に最適化します。
 さらに本研究では、この新規な糖鎖アルブミンデリバリーシステムに高次触媒機能を付与して生体内での医薬品合成の基盤技術を確立します。すなわち、(3)遺伝子工学的手法と併用して、糖鎖付加アルブミンに特定の遷移金属触媒を導入し、目的の治療に即した反応を効率的に実施できる人工の金属酵素システムを創製します。(4)糖鎖付加人工金属酵素を用いて、標的のがん付近や細胞内で金属触媒反応を効率的に実施することにより、選択的に抗がん活性分子を合成し(ドラッグ合成)、抗がん活性分子を放出し(ドラッグ放出)、または薬理活性分子をがん細胞に複合化することによって(ドラッグ複合化)治療することを目指します。
 従来使用されてきたプロドラッグ法では、その反応許容性が限定されていました。様々ながんに選択的な酵素や抗体も限定されているのが現状です。一方、本課題では、独自に見出した多様な糖鎖アルブミンデリバリーシステムと遷移金属触媒を活用することによって、がんやステージに応じた治療分子群を生体内で自在に調製することが期待できます。さらに、一旦、がんに金属触媒を埋め込むことによって、次に導入する反応基質を変えるだけで様々な分子群を調製することができ、マウス内で直接、その効果を探索・評価することが可能となります。一方、単体では薬効の弱い薬理活性分子であっても、がんに直接これらの分子を金属触媒反応で複合化することにより、薬理活性が増強されるとともに、効果が長時間持続することが期待できます。
 このように、これまで副作用や安定性、あるいは活性の弱さのために日の目を見なかった「薬理活性分子」の可能性を生体内で最大限に開拓する基盤技術を開発することが本研究課題の大きな狙いです。本研究はまさに次世代のドラッグデリバリーシステムの手法を提起する研究であり、有機合成化学が切り開く次世代の生命•創薬科学であると言えます。

図1 図1: 生体内遷移金属触媒反応によるがんの生体内合成化学治療:この戦略では、遷移金属触媒を付けた糖鎖アルブミンを体内に導入することで、「パターン認識」により金属触媒を失活させることなく迅速に生体内のがん部位に担持する。続けて薬理活性や毒性がない原料を導入すると大部分は排泄されるが、がんに移行した時に望む金属触媒反応が進行し、がんで選択的に抗がん剤を合成して副作用なく治療する。
図2 図2: 研究室の様子

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