先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業 Science and Technology Platform Program for Advanced Biological Medicine

採択課題

高分子ナノテクノロジーを基盤とするバイオ医薬品送達システムの開発

<研究開発代表者> 西山 伸宏

東京工業大学 科学技術創成研究院

西山 伸宏

 核酸医薬、生理活性ペプチド・タンパク質、抗体などのバイオ医薬品は、次世代の医薬品として注目されていますが、単独では十分な薬効を得ることが困難であり、ときには副作用の発現も問題となります。具体的な課題としては、(i)低い細胞膜透過性、(ii)低い血中安定性と患部到達性、(iii)全身作用による副作用の発現が挙げられますが、本研究課題では、これらの諸問題を解決し、バイオ医薬品の実用化を加速する先端的DDS技術の開発を行っています。(i)に関しては、核酸医薬やペプチド等の中分子医薬の共通の課題であり、カチオン性脂質からなるリポソーム等が検討されていますが、体内動態の制御や毒性の回避が課題となっています。そこで本課題では、血中pHでは電荷的中性を示す一方で、腫瘍内の弱酸性環境でカチオン性に変化するpH応答型ベタイン構造を含有するスマートポリマーを利用したナノDDSの開発を行います。これまでの研究では、スマートポリマーで表面修飾した量子ドット(QD)が、PEG修飾体と比較して、同等の血中滞留性を示す一方で、3倍以上の固形がん集積性を示すことを明らかにしてます(Agnew. Chem. Int. Ed. 2018)。ここでは、優れた血中滞留性を示しながら、腫瘍到達後にがん細胞の細胞質内へと中分子医薬を送達する新規技術の確立を目指していきます。(ii)に関しては、水溶性の高いタンパク質に対して、患部へのデリバリーと活性化を両立できるDDS技術の確立は大きな課題でしたが、我々は、タンパク質/ポリフェノール類/ボロン酸含有ブロック共重合体の三元系からなる高分子ミセルの開発を進めてきました。これまでにモデルタンパク質としてGFPを内包した高分子ミセルを構築し、血中滞留性並びに固形がん集積性を向上させることに成功しています。また、本システムは、pH応答性を示し、がん組織等の弱酸性環境下で内包分子を放出させ、活性化させることが可能です。ポリフェノール類との相互作用はあらゆるバイオ医薬品に適用できるため、このシステムの幅広い応用が期待されます。(iii)に関しては、抗体医薬に環境応答性や作用部位特異性を付与したポリマー-抗体複合体の開発を行います。この技術により、正常組織に発現する抗原や抗体の交差反応性に由来する抗体医薬の副作用の回避が期待できます。以上のように、本研究課題では、機能性ポリマーの精密設計に基づき、GMP製造やコストの観点から実用化において最も重要である「シンプルかつ高機能」を実現するバイオ医薬品の先端的DDS技術の確立を目指していきます。

図1 図1: バイオ医薬品における課題とその解決に向けたナノDDSの開発
図2 図2: 腫瘍内pHに応答して電荷的中性からカチオン性に変化するスマートシェル(pH応答性ベタインポリマー)(左)とスマートシェルで被覆した量子ドットの固形がんへの集積(右)(PEGと比較して3倍以上のがん集積性を実現)
図3 図3: タンパク質/ポリフェノール類/ボロン酸含有ブロック共重合体の三元系からなる高分子ミセル (PEG-ブロック共重合体はタンニン酸(TA)とpH応答性のボロン酸エステルを形成. GFP内包ミセルは優れた血中滞留性と固形がん集積性を示した)

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