先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業 Science and Technology Platform Program for Advanced Biological Medicine

採択課題

新規ゲノム編集技術を用いた次世代CAR-T細胞療法の開発

<研究開発代表者> 真下 知士

東京大学 医科学研究所 実験動物研究施設 先進動物ゲノム研究分野

真下 知士

 2012年に初めて開発されたゲノム編集技術CRISPR-Cas9は、培養細胞、微生物、植物やモデル動物において遺伝子を効率的に改変できることから、世界中の研究者に利用されている。しかしながら、1)標的配列以外のゲノム領域を誤って切断してしまうオフターゲット変異、2)変異細胞と野生型細胞が混ざったモザイク変異、3)標的ゲノム配列がリピートやヘテロクロマチン構造内などの切断されにくい、 4)知的財産の多くが米国に押さえられているため、日本国内で開発したモデル動物やゲノム編集による遺伝子治療法の開発、利用が制限されるなどの課題が存在している。
 我々は、Class 1(Type I)に属する大腸菌由来CRISPR-Cas3を用いて、ヒト細胞(真核細胞)においてCRISPR-Cas9のようにゲノム編集ができることを発見し、特許申請、大学発ベンチャーC4Uを設立した。本ゲノム編集技術には以下の利点が考えられる。1) Cas3は強いヘリカーゼ活性を持つことから、Cas9では難しい ヘテロクロマチンやリピート配列をゲノム編集できる。2) Cas9は20塩基を、Cas3は27塩基を認識することから、より高い特異性(オフターゲット効果が低い)が期待される。3) Cas3は標的配列に数百~数千塩基の大きな欠失変異を起こすことで、遺伝子を大規模にノックアウト(破壊)あるいはノックイン(挿入)することが可能である。4) Cas9の基本特許、周辺知財については米国に抑えられているが、Cas3の基本特許については日本で既に成立している。本研究の第一の目的は、日本発のゲノム編集技術CRISPR-Cas3を遺伝子治療に利用できるようPOC実証実験し、多くの製薬企業等が利用できる遺伝子治療用ゲノム編集プラットフォームを確立することである。
 我が国では悪性腫瘍が死亡原因の一位となっており、悪性腫瘍に対する効果的な治療法・再発予防法の開発は喫緊の課題である。キメラ抗原受容体CAR-T細胞療法は、免疫チェックポイント阻害薬と並んで次世代のがん免疫療法として高い注目を集めている。現在、CAR-T療法はB細胞性腫瘍には高い治療効果を発揮するが、固形がんに対しては有効性が乏しい。分担研究者の玉田らは、CAR-T細胞にサイトカインIL-7やケモカインCCL19を分泌させて免疫細胞の増殖能や集積能を高めることで、固形がんでも治療効果を発揮するPrime CAR-T細胞技術を開発し(図2)、特許申請、大学発ベンチャーNoile-Immune Biotechを設立した。CAR-T細胞療法は、患者から採取したT細胞にウイルスベクター(レトロあるいはレンチウイルスベクター)を使ってCAR遺伝子を導入し、培養した上で患者の体内に戻す自家T細胞治療であり、1)患者の免疫状態にT細胞の品質が左右される、2)培養と品質チェックに時間がかかる、3)製造コストが高額になる、といった問題点があった。本研究の第二の目的は、新規ゲノム編集技術CRISPR-Cas3と新規がん免疫療法Prime CAR-T細胞の二つの技術を融合して、より汎用性と効果に優れた新型の他家CAR-T細胞療法を開発することである(図3)。本研究では、国産ゲノム編集技術CRISPR-Cas3を利用してCAR-T細胞において内在性TCR遺伝子をノックアウトすることで、他家のCAR-T細胞療法を確立する。さらに、PD-1遺伝子をノックアウトすることでCAR-T細胞の抗腫瘍効果を高める。

図1 図1: ゲノム編集技術CRISPR-Cas3とCas9の比較
我々が開発したCRISPR-Cas3システム(左)と従来のCRISPR-Cas3システム(右)の特徴を示した。
図2 図2: 従来型CAR-T(左)とPrime CAR-T細胞療法(右)
Prime CAR-Tが固形がんに対し治療効果を発揮する機序を示した。
図3 図3: 本研究課題の実地体制
本研究課題は、AMED、東京大学、山口大学、C4U、Noile-Immue Biotech と連携、協力し実施する。

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