先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業 Science and Technology Platform Program for Advanced Biological Medicine

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採択課題

高性能中分子医薬のスマートデザイン基盤技術開発

<研究開発代表者> 門之園 哲哉

国立大学法人東京工業大学 生命理工学院

門之園 哲哉

 高性能な分子標的治療薬として、抗体医薬の開発が進められています。抗体医薬は標的特異性が高いため、従来の低分子医薬よりも高い治療効果と低い副作用が実現できるのが特徴です。一方で、抗体は複雑な構造と大きな分子量を持つため組織浸透性が低く適用疾患が限られることや、細胞膜を透過できないため標的分子が限られていること、安価に化学合成できないことなど、新たな課題も顕在化しています。
 抗体医薬を代替する次世代の創薬モダリティとして、中分子ペプチドが注目されています。中分子ペプチドは、低分子医薬と同様に細胞内外の様々な分子を標的にすることが可能で、抗体医薬と同様に高い標的特異性を有するため、両者の長所を併せ持つ理想的な医薬の創出につながると期待されています。しかし、標的結合性を有する中分子ペプチドがこれまでに多数報告されていますが、いずれも抗体と比較すると結合力や特異性が低く、実際に医薬として認可された例はほとんどありません。この原因の一つとして、有効なデザイン技術が確立されていないことがあげられます。標的結合中分子ペプチドの取得を目指す場合、一般的にはペプチドライブラリーに含まれる限られたサイズの配列空間内を探索するのが一般的です。しかし、現在のスクリーニング技術で評価できる配列数は最大でも1015程度なので、網羅的に探索できる配列空間の上限はわずか12アミノ酸長程度であり、医薬として応用できる高性能な中分子ペプチドを取得できる可能性が低くなっていると考えられます。
 このライブラリー空間の限界を突破し、中分子ペプチド創薬を加速するために、本プロジェクトでは機械学習による高性能化ステップを取り入れた「高性能中分子医薬のスマートデザイン基盤技術」を開発します。国立大学法人東京工業大学(研究開発代表者:門之園哲哉)と国立研究開発法人産業技術総合研究所(研究開発分担者:齋藤裕)の研究チームの連携により、①強い抗原結合力と高い標的特異性が得られるペプチド骨格、②膨大な候補配列の中から効率よく機能ペプチドを取得するためのフェノタイプ・スクリーニングシステム、③教師データ取得に必要となるペプチド群並列解析システム、④機械学習による高性能ペプチド予測システムを開発し、企業導出を図ります。本プロジェクトで開発するこれらの基盤技術は、ペプチドや低分子量化抗体などの中分子医薬全般の開発に適用できる革新的な技術になると期待されます。

図1 図1: 本プロジェクトの目標
「抗体に代わる創薬モダリティとしての骨格ペプチド」と「機械学習を利用した中分子創薬技術」を確立する。骨格ペプチドは化学合成可能なサイズであり、組織浸透性や製剤コストの面で従来の抗体医薬や低分子量化抗体に対して大きな優位性を持つ。
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