先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業 Science and Technology Platform Program for Advanced Biological Medicine

採択課題

安定構造を持つ網羅的低分子ヒト抗体生成モデル

<研究開発代表者> 石川 俊平

国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科

石川 俊平

 がんをはじめとする様々な疾患において抗体医薬品が臨床応用されており、その高い有効性から、今後も抗体医薬品の開発が加速的に進められていくことが予想されます。ところが、抗体の安定性を含めた物性・親和性などの面で ”優れた抗体の特性” は大変複雑なルールの集合体と考えられるため、臨床応用可能な優れた抗体を開発するための確立されたルール性は明らかになっていません。標的抗原に対する治療抗体開発の基本骨格となる抗体の単離に成功したとしても、安定性や親和性の向上に向けてアミノ酸改変などが必須になることが多いのが現状です。このような抗体医薬品開発における抗体アミノ酸配列の最適化は、ランダムあるいは経験則にもとづく大規模な変異導入による機能スクリーニングによることが多いですが、それが最適な抗体医薬品の開発にいち早く帰結するとは限りません。つまり、高い安定性や親和性が要求される抗体医薬品開発を効率よく成功させるためには、優れた抗体がもつルール性を明らかにすることが重要なテーマになります。
 B細胞は免疫グロブリン遺伝子の体細胞組み換えによって個々の細胞が固有の配列をもつ抗体を発現していますが、その抗体遺伝子配列は膨大な多様性を持っているため、抗体レパトアの全体像を把握するためには、次世代シーケンスを用いた独自の方法論が必要になります。この研究開発計画は、私たちのグループがこれまで開発してきた疾患組織に由来する抗体レパトア配列の次世代シーケンス技術と、レパトア配列情報を用いた深層学習技術を基礎として、先端的バイオ創薬のための新しい基盤的技術の開発を狙うものです。この研究では、リンパ球に由来する抗体レパトア・シーケンスデータをできるだけ多く取得して、そのなかから抗体のアミノ酸配列や構造の特性に着目した人工知能技術によって有用と考えられる抗体を見つけ出します。さらに、抗体の物性評価に実績をもつ研究分担者らのグループが、さまざまな側面から抗体の物理化学的特性を実測し、その実測データを深層学習法に還元することによって、より高精度な人工知能技術の確立を目指します。
 この研究開発計画の成果は、抗体医薬品開発分野の広い範囲に波及効果を及ぼす基盤的技術になることが期待されます。将来的には、この基盤技術を応用して、新しい抗腫瘍抗体を同定・開発することや、臨床的に実績のある抗体医薬品の安定化・高親和性化を行うことも計画しています。日本において保健衛生上大きな問題となっている悪性腫瘍疾患を中心に解析を進め、新しい先端的バイオ創薬に貢献できる基盤技術の創出を目指します。

図1 図1: 研究開発計画の基盤となる技術
図2 図2: 研究開発計画の概念図
図3 図3: 研究グループの全体写真
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