先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業 Science and Technology Platform Program for Advanced Biological Medicine

採択課題

拡張結晶スポンジ法によるタンパク質の革新的分子構造解析

<研究開発代表者> 藤田 大士

京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点

藤田 大士

 2013年にチーム内メンバー(東京大学 藤田誠)が発表した「結晶化を必要としないX線結晶構造解析手法」(結晶スポンジ法、以下CS法:Nature, 2013, 495, 461)は、分子が関与するあらゆる自然科学研究を革新する可能性を秘めています。本研究開発では、結晶スポンジ(CS)を「分子を捕捉しその観測手段を変え、新たな情報取得を可能とする空間材料」と再定義し、巨大中空ケージをCSとする新しいタンパク質構造解析手法を開発します。分析対象分子をタンパク質やそのリガンド複合体まだ拡張することは(従来法の低分子のみ)、2013年のCS法発表以降、特に製薬業界より繰り返し受けていた強い要望であり、我々にとっての悲願でもありました。技術開発にとっての最大の障壁は、タンパク質を包接可能なサイズ(おおよそ10ナノメートル程度)の内部空間を有する結晶性の構造体を作ることがこれまで不可能だった点にあります。しかし研究開発代表者らは近年、ウイルスのカプシド構造構築にも見られる「分子の自己集合(self-assembly)」原理と、その集合生成物を数学的に記述・設計する新手法を考案し、これまで不可能だったサイズの結晶性構造体を合成することを可能にしました(Nature 2016, 540, 563.)。これによりタンパク質を分析対象分子とする準備が整ったと言え、また予備知見から、包接タンパク質が溶液中と同一の構造を保持していることが確認できています。最終的には、従来法では観測できなかった、弱く過渡的なタンパク質-リガンド複合体の安定化し、その構造解析の実現を目指します。

 主要研究項目は次の通りです。

 ① CS法のタンパク構造解析への拡張
これまで低分子のみが対象であったCS法を、タンパク質分子にまで適用すべく技術拡張を行います。この対象分子サイズの拡張により、CS法は低分子からペプチドや核酸等の中分子、そしてタンパク質といった主要創薬モダリティをカバーする分析基盤となることを期待しています。

 ② 医学研究との融合
既存および新規開発技術の組み合わせにより、低分子のリガンド探索から、タンパク質との複合体構造解析まで垂直統合した創薬支援基盤が実現を目指します。本研究計画では、慢性疼痛制御リガンドの探索をモデルシナリオに設定し、技術をより目的に則した形に改良、創薬研究おける有用性を示す計画です。

 ③ 創薬支援基盤の構築
上述の研究事項に加え、創薬支援基盤への技術移転・実装を見越した、CS技術の汎化、改良研究も同時に行います。開発技術は、企業導出あるいはナノテクノロジープラットフォーム等の共用施設へ技術移転を行い、一般ユーザーがアクセス可能な分子構造解析拠点の構築を目指します。

図1:結晶スポンジ法概念図
結晶スポンジ法の概念図。分析対象試料を結晶化することなく、結晶性多孔性材料(CS)に染み込ませることで、立体構造解析が可能となる。
図2:ケージ型分子の歴史
ケージ型分子の歴史。近年のブレイクスルーにより、タンパク質分子に匹敵するほど巨大な中空分子が合成できるようになった。
図3:タンパク質包接の概念図
タンパク質包接の概念図。包接により構造が安定化され、各種複合体の分析が容易になることが期待される。
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