先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業 Science and Technology Platform Program for Advanced Biological Medicine

採択課題

核酸医薬への応用を目指した非環状型人工核酸の開発

<研究開発代表者> 浅沼 浩之

名古屋大学大学院工学研究科生命分子工学専攻

浅沼 浩之

 核酸医薬は低分子医薬品と同様に化学合成が可能であり、かつ抗体医薬並みの高い特異性を持つことから次世代型高分子医薬として期待されています。核酸医薬開発には、RNAに対する高い親和性と酵素耐性が両立した人工核酸が不可欠であり、これまではDNAの固いリボース環骨格を維持しつつRNAの認識に適した立体構造が取れるような化学修飾を施した人工核酸が検討されてきました。しかし骨格が天然のリボースと構造的に類似しているため酵素耐性は必ずしも十分ではなく、また代謝後に内在性の核酸分子に再利用される可能性があり副作用の一因となることが懸念されていました。さらにこれらは合成展開性や機能拡張性が乏しいことから、有効性、安全性を向上させる上で大きな障害となっていました。一方代表者の浅沼らは、天然アミノ酸のセリンあるいはトレオニンを還元して得られるセリノール誘導体を用いた、全く非環状型人工核酸 (SNA, L-aTNA)の開発に成功しました。これらは柔軟な非環状構造にも関わらず、RNAに対する親和性が天然のDNAより高いという特長を持っております(Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 1285, Chem. Commun., 2015, 51,6500)。我々は、これらが従来の人工核酸を遥かに凌駕する高い酵素耐性を持ち、SNAを組み込んだsiRNAがRNAi活性を失うことなく酵素耐性を向上させることも明らかにし(ChemBioChem, 2014, 15, 2549)、ビーコン化siRNAでsiRNAの細胞内動態を蛍光追跡することにも成功しました。さらにmiR21を標的にしてSNAのみで設計したアンチセンス核酸(AMO)が、市販のBNA型AMOを凌駕する活性を持つことも明らかにしてきました (ChemBioChem, 2017, 18, 1917)。さらに最近、名古屋大学医学部との共同研究を通じて、SLGT2を標的としてSNAおよびL-aTNAで設計したアンチセンス核酸(ASO)を設計して動物実験を行ったところ、対応するタンパク質発現の抑制と糖の排泄促進が観察されました。
 本申請研究では、これらの成果に基づき研究協力者として名古屋大学医学部の医師と企業(2社)に参画いただき、1)化学修飾による非環状型人工核酸の更なる機能拡張、2)膵癌等を標的とした修飾型siRNA、3)慢性腎臓病治療に資する修飾siRNAおよびギャップマー型アンチセンス核酸、4)敗血症など過剰免疫反応を抑制するAMOおよび修飾miRNA(miR21 and miR164a) を開発し、非環状型人工核酸を使用した核酸医薬設計のための基盤技術開発を行い、核酸医薬、さらには診断薬への応用を目指します。

図1 図1: 当研究室で開発した3種類の非環状型人工核酸D-aTNA (acyclic, D-Threoninol Nucleic Acid), SNA (Serinol Nucleic Acid), およびL-aTNAの化学構造(上図)と、それぞれの(人工)核酸間の二重鎖形成能(下図). 各人工核酸間の直交性は、主鎖のメチル基の位置のみで制御可能。
図2 図2: DNAおよび人工核酸オリゴマーを合成する装置(および大学院生)
(人工)核酸モノマーの溶液および反応試薬をボトルに入れて装着し、コンピューターで配列を入力すれば、任意の配列を持つ(人工)核酸オリゴマーが合成できます。
図3 図3: SNAのみで構成されるモレキュラービーコンを用いた、細胞内mRNAの可視化
SNAやL-aTNAは天然のDNAよりRNAに対する親和性が高く、また主鎖骨格の構造が天然のDNAと全く異なるのでヌクレアーゼで分解されないため、細胞内で安定です。そのためこれらの非環状型人工核酸は細胞内のRNAを認識するのに適しています。
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