先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業 Science and Technology Platform Program for Advanced Biological Medicine

採択課題

細胞質に直接導入できる膜透過性オリゴ核酸分子の開発

<研究開発代表者> 阿部 洋

名古屋大学大学院理学研究科教授

阿部 洋

 従来の医薬品では治療が困難であった疾病に有効な医薬として、アンチセンス法やRNA干渉法に基づいた核酸医薬に注目が集まっています。しかしながら、薬理活性分子であるアンチセンス核酸やsiRNAを細胞質内に効率的に導入するデリバリー法が無い点が大きな課題となっています。既存法としては、カチオン性ポリマーでオリゴ核酸を抱合したリポソーム法や、細胞膜受容体に対するリガンドをオリゴ核酸に導入するリガンドコンジュゲート法が知られていますが、両者ともに細胞内への取り込みにおいてエンドサイトーシスを経ており、エンドソームからの細胞質へのオリゴ核酸の脱出効率が非常に低いことが課題となっています。更に前者には、カチオン性基材に由来する細胞毒性や、分子組成が一義的に定まらないなどの点で医薬応用には適さない性質があり、製薬業界ではリポソーム法に代わる新たな細胞デリバリー法への開発が強く求められています。

 本研究では、我々が独自に開発したジスルフィド法という分子送達法を発展させ、オリゴ核酸医薬の細胞質内デリバリー法を確立します。この手法では、ジスルフィド基を末端に導入したオリゴ核酸(Membrane Permeable OligoNucleotide; MPON)を活性分子として利用します。ジスルフィド構造が細胞膜上のタンパク質と結合形成し、それを足がかかりにオリゴ核酸が直接的に細胞質内に取り込まれるメカニズムが考えられています。細胞実験においてMPONは10分という非常に短時間で細胞質内に効率的に分布し、遺伝子発現抑制効果に関しても、従来のリポフェクション法を上回る活性を示しました。さらに、マウスにおいてMPONの体内分布を解析した結果、通常のオリゴ核酸と比較してMPONは肺、脳、筋肉になどの臓器・組織において優位に取り込み量が増加しました。本研究ではこの成果を足掛かりに、取り込みの詳細な分子機構の解析、ジスルフィドユニットの構造最適化と脂溶性のチューニング、標的指向性リガンドの導入等の分子構造の最適化を通じて、標的組織選択性と高い細胞質導入効率を兼ね備えたデリバリー法を確立します。
 また、中皮腫やその他の疾患の治療を可能とするsiRNA-MPONおよびantisense-MPONを開発し、有効な分子標的薬の存在しない疾患に対する有効な治療法の確立を目指します。以上のような一連の研究を通じて、ジスルフィド法がオリゴ核酸医薬開発におけるボトルネックを打破する画期的なオリゴ核酸のデリバリー法であることを実証します。

図1 図1: ジスルフィド法のコンセプトとMPON投与10分後の細胞内分布
図2 図2: 研究グループの集合写真
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